ヌーヴェルヴァーグ以後の女優
70年代以降、時代のアイコンになるような、強烈な個性を持った女優は現れませんでしたが、
映画表現が多様化するに当たり、その多様化のニーズに応えられるような女優が多く現れました。
80年代に一躍有名になったのは、ソフィー・マルソー、エマニュエル・ベアール、
ジュリエット・ビノシュなどです。
ビノシュは、新進気鋭の監督、レオ・カラックスの私生活でのパートナーになったばかりでなく、
彼のミューズとして、映画「ポンヌフの恋人」「汚れた血」等に主演しました。
デビュー作にして鮮烈な印象を人々に焼き付けたのは、ジャン=ジャック・ベネックスの
「ベティ・ブルー」に主演したベアトリス・ダルです。
強烈な印象を持つエキゾチックな顔立ちに、女性らしい豊かな体を持ち合わせ、破天荒な
個性とともに、一躍時の人となりました。
「べディ・ブルー」のポスターには、彼女のモデルとしてのポートレート写真がそのまま
起用されたとのことです。
自らの体をさらけ出し、体当たりの演技で話題を呼んだのは、「美しき諍い女」のベアールや、
「狂気の愛」のマルソーです。
ヌーヴェルヴァーグ(以下NV)以後の女優は、バルドーやエーメのような絶世の美女ではなく、
同じ美女でも、より親近感を持てるようなタイプでした。
ダルのような個性は、かつてのフランス映画にはなかったものです。
映画が多様化するその流れの中で、女優の個性も多様化していったのでしょう。